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January 07, 2020

ドラキュラ伯爵

 BBCの「シャーロック」の製作陣によるNetflixオリジナルシリーズ。予告編を見て、ゴシックホラーってあまり好みじゃないからどうしようかなって思ったんだけど、全3話で一気見できそうな感じだったのでチャレンジしてみました。

 最初の舞台は19世紀末。トランシルヴァニアのドラキュラ伯爵の城から命からがら逃げ出したイギリスの弁護士ジョナサン・ハーカーが、身柄を保護してくれている修道院でオカルト研究をしているシスター・アガサに城での出来事を語り始める。
 イギリスへの移住を希望する伯爵の物件購入の手続きのために彼の城を訪れたジョナサンは、その滞在中、自分に助けを求めてくる者が城のどこかにいることに気付く。伯爵のいない日中にその人物の捜索を始めた彼は、迷宮のように複雑な造りの城の奥深くで、箱に詰められた「生きた死体」に遭遇する。

 ドラキュラ伯爵の城に到着した時点からゴシックホラーな雰囲気満載だし、おまけにゾンビまで出て来ちゃって「なんじゃこりゃ」だったんだけど(苦笑) そこでくじけずに見ていったら、ジョナサンを追って修道院に現れた伯爵がアガサと絡むあたりから面白くなってきました。
 2話目は伯爵が乗ったイギリス行きの船デメテル号で乗組員や乗客が次々と殺されていき、伯爵がイギリスで殺戮を繰り返すのを阻止するためにアガサが立ち向かう話。
 そして3話目は、海底に沈んだデメテル号の近くから発見された伯爵が現代に復活。イギリスの研究機関”ジョナサン・ハーカー財団”の科学者ゾーイに捕らえられ施設に監禁されるが、「人権」を理由に自由の身となり、今を生きることを楽しむ若い女性ルーシーと出会う。

 独特のわちゃわちゃした映像作りを見ると「シャーロック」の製作陣による作品っていうのがすぐわかる。そして多分、ドラキュラが現代に蘇ってテクノロジーに触れる3話目こそ製作陣がもっとも描きたかった部分で、1話と2話はそのために必要な前置きだったんだろうなって感じがしました。出会い系アプリでエサ探してメールでドラキュラの絵文字使う伯爵の姿を描いてみたかったんだろうね(笑)

以下ネタバレを含む感想です。

 個人的には、修道院でのアガサと伯爵とのやり取りが面白かったから、そのまんまの時代を舞台に描いて欲しかった気もするんだけど(尼さんたちのあたふたっぷりをもっと見たかったし。笑) でもドラキュラ伯爵を捕らえたジョナサン・ハーカー財団は、かつて彼の犠牲になったジョナサンの婚約者ミーナがイギリスでアガサの親戚と協力して設立した組織ってことで、過去としっかり話や人物がリンクしている点が興味深かった。それと血を吸った者の記憶や能力が身に付くっていう点も、物語を進めていくうえで上手い設定だよね。城でジョナサンが弱っていくたびに伯爵の英語が上達していくところとか。

 ドラキュラがなぜ生き続けるために人間の血を飲むのか、なぜ日光や十字架を恐れるのか、なぜ死者の血が彼にとって毒なのか、伯爵自身ですら理解できていないその理由に対する答えを見つけるのには、アガサの親戚の子孫であるゾーイと現代で出会う必要があったんだなと最終話まで見て思いました。
 同じNetflixで観た「オルタード・カーボン」は時代もテクノロジーも違うけど、記憶をダウンロードし新しい肉体を用意すれば永久に生きることができる、でもそれが本当に幸せといえるのか、「死は苦痛から逃れるための最後の救済」っていう死生観みたいな部分において共通したテーマの作品のような印象を持ちました。軍人の一族に生まれ、先祖はみな戦って名誉ある英雄として死んだのに、自分はその「死」と向き合う勇気がない。だから勇気の象徴である十字架を恐れるし、死を恐れないルーシーに心を惹かれた。彼を(研究対象としてだけど)理解しようとするアガサや、復活しても正気を失わないジョナサンやルーシーを「花嫁」としてずっと傍に置きたかったのも、なんだかまるで自分が恐れるものと向き合う勇気のない寂しがりやの小さな子供みたいで、このオヤジがなんとも愛おしく思えてきました。

 さて、最後に自分にとって毒であるゾーイの血を飲んだ伯爵だけど、彼が死という恐怖を受け入れた今となっては果たしてゾーイの血は毒となりうるのか? それに財団の資金源もなんだか謎のままだし、もしかしたら伯爵とゾーイが現代で何かしらの謎に立ち向かっていくという続きもあるのかもしれないよね。個人的にはあそこで終わらせた方が美しい結末だとは思うけど^^;
 そして最後にそもそも論なしょうもないツッコミをさせてもらうと、

ミーナがつまらん愛を信じたりせずジョナサンの胸に杭を打っとけば、あんなに犠牲者出なくてすんだよね!

 あ、財団作ったのはその罪滅ぼし&ドラキュラ伯爵の英国制覇を阻止するためだったのかも。

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