Happy Valley - series 1
西ヨークシャーの町で警官をしているキャサリンは、亡くなった娘ベッキーが産んだ子ライアンと、元ヘロイン中毒の妹クレアとともに暮らしている。ベッキーの死後、地元新聞の記者で夫のリチャードと離婚し息子のダニエルとは疎遠になっていた。
この町では若者の間にあらゆる麻薬がはびこっているのが大きな問題で、キャサリンも麻薬絡みでトラブルを起こすゴロツキたちの取締りに日々追われていた。そんなある日、キャサリンは麻薬取引で有罪となり服役していたトミー・リー・ロイスが出所したことを知る。孫のライアンはベッキーがロイスにレイプされて産まれた子だったが、裁判ではレイプに関しては罪を問われず、娘を自殺に追いこんだ彼をキャサリンはいまだ許してはいなかった。
ライアンは手の焼ける子で、彼が学校でかんしゃくを起こすたびにキャサリンは教師に呼び出されていた。彼の反抗的な態度や問題行動は、父親であるロイスの暴力的な性格を受け継いでいるかのようだった。
父親の親友ネヴィルが経営する会社で経理をしているケビン。娘が私立学校の試験に合格し、どうしても入学させてやりたい彼は学費のため社長のネヴィルに昇給を申し入れるが、いい返事はもらえなかった。
もともと父がアイディアを出した会社をネヴィルが独り占めする形で経営し、ケビンは会社の半分の権利を持っているにもかかわらず不当に扱われているように感じていた。日頃から自分に対する待遇に不満を募らせていた彼は、家族と週末を過ごすレンタルキャンプ場の経営者アシュリーが麻薬の取引に関わっていることを偶然知り、アシュリーにネヴィルの娘アンを誘拐して身代金で稼ごうと話を持ちかける。
しかしその後、妻と娘アンに説得されたネヴィルはケビンに、昇給はできないが彼の娘たちの学費を自分が出すと申し出る。ネヴィルの妻ヘレンが肝臓ガンで余命長くないことも知ったケビンはアシュリーに誘拐を中止しようと伝えるが、計画はすでに実行に移されていた。
自分のしたことを後悔したケビンは警察を訪れるが、応対したキャサリンにケビンは結局何も話せなかった。
町のカレー屋の前でロイスを見かけたキャサリンは、店の主人にロイスを見かけたら連絡するよう頼んでいた。その主人からの連絡で、ロイスが入っていったという家を覗くと、返事はないが人が生活しているような様子がうかがえた。しかし、その家のガレージに誘拐されたアンが監禁されていることをキャサリンはまだ知る由もなかった。
以下ネタバレ&感想
誰もが現実から目を背けて生きている。その背けた先に麻薬があれば手を出してしまい、そうしてあらゆる薬物がはびこっている街。
しかし麻薬に手を出すとまではいかなくとも、現実を直視すれば傷つくのは誰もが同じだ。リチャードはライアンが自分の孫だと認めたくないし(娘が自殺した原因がライアンの存在だと思っているから)、そのリチャードに「若者たちの間で薬物がはびこっている現実を全国紙に書くべき」と言うキャサリンですら、仕事柄誰よりも現実を受け止めているように見えて、実は娘のベッキーが自ら破滅の道を選んだろくでなしだったという現実から逃げている。
そんな中で唯一、現実を直視し受け止めた上で、悪い連中と関わらずまじめに勉強し目立たないように生きてきたのはダニエルだが、まっとうな道を歩んだ結果「あんたがかわりに死ねばよかった」と言われてしまう。そして彼もまた現実から目をそらしていく。母親と距離を置くという形で。
ベッキーが息子を産んでいたことを知らされていなかったロイスは、ライアンが家族に受け入れられていないという現実を目にして、彼を現実の世界から連れ去ろうと考える。
そう、現実というものは誰にとっても冷酷で厳しいものなのだ。だから多くの人はわずかに存在する小さな幸せを見出し、それを「大きな幸せ」だと信じてすがって生きていくしかない。
だけどその小さな幸せすら見出せない場所では、行き着く先は見えている。それをどうにかしたいと思っても、地域警察の巡査部長という立場ではたいしたことができないというのがキャサリンの大きな葛藤のひとつでもある。
出演している俳優さんたちについて少し。
キャサリン役の主演サラ・ランカシャーは、日本での放映作はほぼ無いものの、本国ではBAFTAノミネート常連の女優さん。
そしてキャサリンの妹クレアが「ダウントン・アビー」のオブライエンさん…! ブロンドのロングヘアーでオブライエンさんより10才くらい若く見えましたw(゚o゚)w
誘拐計画を持ち出した会計士ケビンは「ホワイトチャペル」でジャック・ザ・リッパー研究家のバッカンを演じていたスティーブ・ペンバートンさん。バッカンはちょいウザキャラでしたが、ここでもさらにウザウザな演技炸裂でお見事でした(笑)
ロイスは「グランチェスター」でもうお馴染みのジェームズ・ノートン。当たり前ですが全然イメージ違います。帽子にメガネというダサい大学生みたいな姿を見ることができたのはちょっと貴重だったかも(笑)
重厚なミステリーや緻密に練られたクライムドラマという作品ではないものの、視聴者に様々な考えを抱かせる良質なドラマだと思いました。シリーズ2を観るのが楽しみです。
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