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February 12, 2018

Altered Carbon (オルタード・カーボン)

 Netflixで配信開始されたばかりのドラマ。
 以前は海外ドラマといえば、本国での放送からだいぶ待って日本でやっと放送というのが当たり前だったわけだけど、Netflixの登場で新しいドラマが世界中で同時に配信されるようになったというのは、海外ドラマファンにとっては実に嬉しい進歩だと思います。もちろん、長年日本での放送を願っていたドラマがようやく放送実現となった時の喜びも格別なものですけどね。

 

 舞台は少し先の未来。
 人間は生まれて1歳になると、DHF(人間の思考)を記録する装置"スタック"を皮下に埋め込むことが義務付けられていた。肉体は"スリーヴ"と呼ばれ、たとえ肉体的が死んでもスタックが壊れていなければ、それを他のスリーヴに移して再生することができる。人はスタックの破損によって本当の死"RD"となる、そんな世界。

 

 テロリストとしてスタック保管刑にされていたタケシ・コヴァッチは、250年経って新たなスリーヴを与えられ仮釈放となった。彼にスリーヴを与えた大富豪バンクロフトは、罪の赦免と莫大な報酬と引き換えに、自分を殺そうとした人物を見つけるようコヴァッチに依頼する。
 バンクロフトは自宅で頭を撃たれスタックもろとも破壊されたが、DHFの自動バックアップのおかげで本当の死"RD"を免れていた。しかしデータ更新の直前にスタックが破壊されたため、死の直前48時間の記憶が無かった。警察はあらゆる捜査の結果、バンクロフトが自殺を図ったものと結論づけていたが、彼は「もし自殺するなら絶対に失敗するはずがない」と言い切る。
 コヴァッチは手始めにバンクロフトに送りつけられてきた数々の脅迫を調べる。360年生きてきた彼には敵も多く脅迫は膨大な数にのぼったが、その中から保護国の軍の支給品の銃を手にしている人物に目を止める。コヴァッチは銃に刻まれた番号から身元を割り出し、元海兵隊員のヴァーノン・エリオットを訪ねる。エリオットの娘リジーはバンクロフトと付き合っていたが、何者かに暴行を受けてスリーヴ・デスとなったうえ、スタックのVR(ヴァーチャル)の中の彼女は精神的ダメージを受けていて、再生できる状態ではなかった。
 その後、バンクロフトが自分を殺しそうな人物たちを自宅のパーティーに招き、コヴァッチにその中から犯人を見つけさせようとする。一方で、ディミトリという殺し屋から執拗に命を狙われるコヴァッチ。一人では手に余ると考えた彼はエリオットに捜査の協力者になってもらうことにする。

 

以下、感想など(長いので隠します)

 とりあえずSFっぽい世界は苦手なわけですが、ストーリーのメインが殺人捜査ときたら観ないわけにはいかない(笑) それにサイバーパンクってスマホやVRが身近になった今ではすっかり廃れたジャンルだけど、身近になった今だからこそ「こういうこともあるかも!」って面白く観ることができました。
 というわけで見始めたドラマですが、暴力的な父親に怯えて育ったコヴァッチの子供時代、生き別れた妹レイリーンとの再会、反乱軍エンヴォイに加わった経緯、刑事のオルテガがなぜコヴァッチをしつこく監視するのかなど、捜査部分より回想エピソードに重点が置かれていました。
  スタックによる再生に関してツッコミたくなりそうな部分もきちんと論理付けた描かれ方をしてた点が良かった。例えば、生まれ変わりが禁じられている新カトリック教徒は再生できないようコードを改変してたりとか(だけどハロウィンには死んだおばあちゃんを一晩だけ再生させて楽しんだりもする^^;)
 裁判所では、亡くなった犯罪被害者を再生させて犯人を割り出す捜査を認める"653判決"に関して、大司教区の反対でなかなか実現しなかったり。
 金銭的に余裕のある人はリース会社に金を払って再利用可能なスリーヴを使うことができるけど、不慮の事故などで亡くなって家族に無料補償されるスリーヴに関しては、
本人とは性別も年齢もかけ離れたものが提供されることがあって、せっかく再生されても精神を病んでしまう場合もある。そして"メト"と呼ばれる一部の富裕層は、自身のクローンを製造して以前の自分と同じス
リーヴを使ったり、中には服を着替えるようにいくつものスリーヴを利用している者もいる。
 富裕層は永遠に生き、そうでないものを支配する。だけど長く生きていればそれだけ不都合も生じてくる。レイリーンのように、兄と再会するという本来の目的のために、いつしか手段を選ばなくなってしまったりもする。人の欲望はさらにエスカレートしていくし、長く生きたところで嫉妬とか愛憎といった感情はしょせん消し去ることができない。エンヴォイのリーダー、クウェルが「スタックによって人間は無限の苦しみから逃れる最後の手段を失った」と言ってたけど、永遠に生きるということは良い変化も進化ももたらさないのだよね。
 だけど精神的にも訓練されたエンヴォイの中には、コヴァッチのようにVRやプログラムに打ち勝つ精神の持ち主もいて、それがいわゆる"魂"というものなのかな、とか考えたり…。
「バトルスター・ギャラクティカ」がこういう宗教的・哲学的なテーマを盛り込んだことで単なるスペースオペラにならなかったように、このドラマもこあらゆる部分で家族のあり方や生と死、肉体と魂について考えさせられる部分が多くて、こうなると私としては俄然ハマってしまうわけです。
(そういえば殺し屋のディミ1号がギャラクティカのヒロだった…コヴァッチは見覚えあると思ったら「The Killing」の人だ!)
 このドラマに唯一ツッコミ入れるとしたら、街の道路が汚いことかなぁ…最高の人造スリーヴを作るのが日本の企業だというなら、その前に自動清掃システムとか真っ先に開発してそうだけど。てかロボット工学=日本やっぱスゲーw(゚o゚)wってイメージ強いね。
 あと日本語のセリフがヘタクソだけど、これはしょうがない!(笑)

 

 などとグダグダ言いましたが、結局のところいちばんツボったのはコヴァッチが持ち歩いてるピンクのリュック(笑) 釈放された直後にヤクの売人からバッグごと買い取ったものだけど、この小学生の女の子が持ってそうなユニコーンの絵柄のちっちゃいピンクのリュックを後生大事に持ち歩いてる姿がたまらんです(笑)

 

 ありえない世界観を楽しむ単純なサイバーパンクではなく、人間にとって普遍的なテーマをもって描かれているドラマなので、SF苦手という方にもぜひ観ていただきたい作品です。

 

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