Above Suspicion: Deadly Intent (犯罪捜査官アナ・トラヴィス/消された顔)
汚職が発覚し1年前に警察を辞めた元警部補のフランク・ブランドンが、ウォーレン・アパートのドラッグハウスで胸と顔を撃たれて殺された。かつて彼の同僚だったラングトンはフランクの婚約者コニーのことを知っていたが、フランクの財布には別の女性と子供の写真が入っていた。コニーの話では、フランクは彼を運転手として雇っていたダニー・ペトロッゾという男に大かな仕事があると持ちかけられ、大金が入ったらコニーと結婚する予定だったという。
ルイスたちがフランクの携帯の最後の通話相手ジュリア・ラーセンの元を訪れると、彼女は「フランクは夫だ」と言う。彼の財布に入っていた写真の女性はジュリアと彼女の前夫の息子ウィリアムだった。ジュリアはペトロッゾの紹介でフランクを運転手として雇い、1ヶ月後に結婚していた。
アナは事件の夜に銃声を聞いたというアパートの住人ウェブスター夫人に話を聞きにいく。彼女は3発の銃声を聞いたと言うが、現場からは2発の銃弾しか発見されていなかった。それが腑に落ちないアナはふたたび彼女の元を訪れ、息子のジェレミーに話を聞こうとする。ジェレミーはアパートに無断駐車する来客の車をすべてチェックしていて、アナは事件当夜に駐車していた車のナンバーを彼から聞き出す。
鑑識のジェンキンズはドラッグハウスの壁の血痕から、フランクの後ろに誰かが立っていたのではと推測する。また現場からはモルヒネの数百倍という危険な薬フェンタニルのアンプルと、残されていたソーダの缶からサイラス・ローチという売人の指紋が検出された。
アナがジェレミーから聞いた車の所有者の中に二人の前歴者が該当し、ひとりはペトロッゾ、もうひとりは微罪で逮捕歴のあるエディという青年だった。警察で取り調べを受けたエディは事件の夜アパートに薬を買いに行き、帰りにフランクと背の高いブロンドの男とすれ違い、その後銃声が聞こえてローチ現場から逃げ、ペトロッゾが背の高い男を庇うように出てきたと話す。
麻薬特捜班のサム・パワー警部が1時間前にローチを逮捕したと報告してくる。その際ローチが所持していた銃がブランドン殺害に使われたものであることが判明するが、ローチはそれを否定。しかしその後ハックニーでペトロッゾの車が見つかり、荷台から彼の遺体が発見されたことを聞くと、その罪を着せられることを恐れたローチは事件の夜の全てを話し始める。
一方アナはジュリアの前夫アンソニー・コリンウッドのことが気になっていた。ネットで彼のことを検索したアナは、彼の名がFBIの最重要指名手配犯アレクザンダー・フィッツパトリックの別名であることを知る。80年代にマイアミのコカインを牛耳っていた彼は82年に逮捕されたが裁判に向かう途中で逃亡、その時に撮られた顔写真はアナがジュリアの家で見たアンソニーによく似ていた。アンソニーに出生証明などの記録が何もないことから、アナは彼がフィッツパトリックと同一人物ではないかと考える。
以下ネタバレ感想
再び一緒のチームで捜査することになったアナとラングトン。ずっと一緒にやってるのかと思ってたけど、違ったんだ^^; レッド・ダリア事件以来ラングトンの方が意識して距離を置いてたそうで、その間にアナも刑事としてずいぶん成長しました。
だけど今回は事件が思いがけない方向に展開していき、一人一人のちょっとした見落としや不注意が重なった結果あと一歩のところで犯人を逃してしまう。捜査ものとしてこういうのってどうのかなという感じもするけれど、FBIが何年も追っててなお見つけられなかった人物をアナたちが完璧な捜査をして捕まえたとしたら、それってやっぱり違うよね。
これがあのテニスンだったら何があってもとことん犯人を追ったと思う。最後もあちこちに連絡したりして、とにかく打てる手はすべて打ったはず。なぜなら彼女は自分のミスは絶対許さないし、部下のミスも、たとえそれで部下が停職に追い込まれることになっても絶対見逃さない。彼女は手柄をあげることで出世してきた人で、そこまで強気にならないと警察組織ではやっていけない時代で生きてきたから。でもアナとラングトンは違う。アナはラングトンが危険に巻き込まれそうなときは犯人逮捕より彼の身の安全を優先するし、ラングトンはアナを刑事として生き残らせるために失敗を握りつぶすよう彼女に教える。各国の空港や警察に連絡して犯人の行き先を掴むことだってできたけど、そうすればアナの失敗を公にすることになる。だからラングトンはあえて何も手を打たなかったんじゃないのかなって思う。
二人の互いを思う気持ちが犯人を逃してしまった。刑事といえどやっぱり人間だから、身内に病人がいればどうしても捜査に集中できなくなるし、目にするものすべてを完璧に憶えてるわけじゃない。意見の違いから足並みが揃わないこともあれば仲間を庇うこともある。完璧な正義感の塊じゃないから、厄介者が国外に去って危険が回避されればとりあえずそれでよし、って考えたりもする。倫理というのは曖昧で線引きが難しく、誰しも殺されたフランク・ブランドンのような堕落警官になりうるのだ。リンダ・ラ・プラントはこの話でそういうことを描きたかったのかも。「この世にまともなものなんて何ひとつ無い」っていうラングトンの言葉がその象徴のように思えた。
最後についに自分の胸の内を叫んだアナ。ラングトンとの今後が気になりますが、以前にもお伝えしたようにシリーズ4の製作がすでに決定しています♪
Above Suspicion: Silent Scream (ITVプレスリリース)
完成が待ち遠しいですね!^^
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初めまして。昔の記事へのコメントになりましてすみません。
今頃になってイマジカBSでアナ・トラヴィスを見ているのですが、
このエピソードのラストにええっ?!となり、
どなたかうまいこと解説してくださっていないか・・・と
ネットをさまよっていたら、こちらにたどり着きました。
「犯人を逮捕できないなんてあり得ない、
ましてやミスを隠蔽するなんて・・・」といった感想が多い中、
的確な解説、大変納得いたしました。ありがとうございました。
しかし最後のアナの涙を見ていると、
S4は悲しいラストになりそうでちょっと不安です・・・。
個人的にはラングトンとうまくいってほしいのですが。
アナが「愛してる!」と叫んだ時には切なくなりました。
靴を両手に持って全力疾走してる姿も、
ちょっと笑っちゃいましたが(笑)やっぱり切なかったです。
Posted by: yuki | December 03, 2014 09:44 pm
yukiさん、こんにちは。はじめまして。
コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまってすみません(> <)
アナ・トラヴィス、面白いですよね。
このエピソードのラストに関しては、あくまで個人的な深読みなのですが^^;
yukiさんのモヤモヤがスッキリされたようで、感想を書いた甲斐がありました♪
「第一容疑者」のように、リンダ・ラ・プラントの作品はリアリティにしっかり目を向けてますね。
万事解決して気持ちのいいラストも良いですが、私はこういう作品も好きです。
靴を持って走るアナ、可愛かったですね(笑)
Posted by: Ayano | January 21, 2015 08:56 pm